「 阿闍梨餅の旨さばかりを思い出しています 」
■ よく行く浅草の店でカウンター内の人をひそかに「おおのくに」と呼んでいる。スイーツ親方の大乃国にちょっとだけ似ているからだ。ご本人と直に話すとき以外は気づかれないように「大乃国の前の席がよかったなあ」とか「大乃国、今日はいい動きしてるなあ」とか、親近感をもって勝手にこそこそ呼ばせてもらっているのだけれど、あるときもしかしたらあだ名バレてる?と感じた瞬間があって「まさか大乃国って呼んでるの気づかれてないよね」ってひそひそ話したときに、くらもちふさこ『おしゃべり階段』で加南が「粟ちゃんはとんがらしが大好きだもんね」って二人だけでつけた真柴くんの秘密のあだ名とんがらし(マーシーこと真柴くんは髪が真っ赤)を使って、真柴くん本人の前で粟ちゃんをからかうシーンがあって、一瞬くもった真柴くんの顔を見逃さなかった粟ちゃんが「まさか私たちがとんがらしって呼んでること気づかれてない?」と心配するところを思い出しました。じつは真柴くんはすべて知っていたことがあとでわかるのだけれど、いつそれを知ったかというのが番外編『まゆをつけたピカデリー』のラストシーンで出てきて、それが本編の真柴くんと加南、粟ちゃんとの出会いの場面につながっているという、ああ、まったくなんてよく出来た物語なんだろうか、『おしゃべり階段』がまた読みたくなってきました。何百回も読んだけど。
■ くらもちふさこをはじめて読んだのは小6か中1のときで、それが『おしゃべり階段』でした。単行本を学校に持っていって女子に貸してあげたら、それが教師に見つかり取り上げられて、あとで職員室に呼ばれ「こんなもん読んでたらオカマになるぞ」と諭された思い出があります。70年代の後半。呑気な時代だったなあ。先生、私はその後も大量の少女マンガを読み続けてきましたが、幸か不幸かオカマにはなりませんでした。たぶん。私はその先生に国語の能力をひどく買われていて、もう何十年も前のことだから自慢にもならないけれども、学年でもずば抜けていると言われたことがあり、その先生の存在とその言葉がここまでの私の人生に関わっているのはまちがいなくて、まったく教師ってやつはおそろしいことを言う者だといまだに時々思い出します。あ、いや、そんな話はいいんだ、そんなあれで『おしゃべり階段』を思い出して積まれたまま読んでなかった『駅から5分』を読もうかと思ってますと書くつもりで、いまは中原昌也『死んでもなにも残さない』を読んでおります。
■ 土曜日の池袋THREEのライブ。まったく失礼なことに記憶が薄くてまとまった感想を書ける気がしない。土井さんのかわいい笑顔と阿闍梨餅の旨さばかりを思い出しています。
なー、ゴマ。
by gomaist
| 2011-06-06 23:55
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