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「 どこに向かっているのでしょうか 」

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■ 観た直後にツイッターで書いた感想よりはもうちょっと考えて書こうとすると、もう全然感想が追いつかない。で、宿題が溜まる、仕事が滞る、ような神経を痛める状態になるので気にしないでいるとますます書かなくなってしまう。書きたくて続けているブログがそんなおかしなことになってしまうのは心外なのだけれど、観たい演劇やライブは増える一方で追いつけないままさらに12月はちょっとした繁忙期並みのスケジューリングになってしまった。私はどこに向かっているのでしょうか。

■ 11月19日にアトリエヘリコプターで五反田団『五反田の夜』を観た。初五反田団。ツルの折り紙で「日本を元気にする」善意のボランティア活動、小さなムラに起きる小さな諍いがおもしろおかしく、しかし生々しいがゆえに痛かったりもするのだけれど、それが絶妙に掠るくらいの感じで現実の深刻な頬を嘲るように切る。名の通り五反田を舞台に成城石井だの東急ストアだの、目黒川の肉まつりだのと、狭くてせせこましい人間関係の機微だけで語られてゆく芝居なのに閉じてた印象はない。登場人物全員が善人であると同時に悪人とも言えて、ささやかな笑いの中で悪意は無自覚に社会に浸透していき、絶望と希望は永遠のイタチごっこを続けるのだな、まさしく私たちの生活がそこにあるように思えた。会話が抜群に巧く、グラデーションのように感情と関係の濃度が動いていくのがおもしろかった。小品的な位置づけらしいがおおいに楽しみ笑いました。そんでいま、前田司郎氏(三島賞作家!)の小説を読み始めています。

■ 11月21日には王子小劇場で悪い芝居『駄々の塊です』を観た。いきなりの爆音音楽+怒鳴り系モノローグの応酬にアングラという古い記憶を掻き回されて、これは失敗したかなと不安になる。悪い芝居は京都の劇団で台詞は早口の関西弁、それをアニメ的なデフォルメで演じるものだから、ますます性に合わない、うざいわ〜、悪い芝居じゃなくうざい芝居だわ〜、と心で毒づきながら、90分我慢する覚悟で向き合ったのだけれど、これが実によく出来た作品でいつの間にかうざさがパワーとなってドライブする世界に呑み込まれて見入っていた。肝はステージとなる回転式舞台。それを回転させながら、時に回転中に俳優が舞台上を歩き回り、場面転換や人物の入りとハケ、さらに複数のシーンを同時に見せていく。その構成と手際が見事で戯曲、演出、美術とすべてを同時に作っていかないと出来ない、というか、いや、一体どうやって作ったのか想像できないつくりになっていたのだった。「動物が消えた動物園」という設定と象徴性もいいし(回転式舞台を手動で回すのは動物の面を被った者=「消えた動物たち」)、物語の展開にも惹き込まれたけれど、内容に関しては特別に考えさせられることなく、ただそこは好みの問題で私の見方ではそれが作品の良い悪いに影響することはあまりなかった。作り手には失礼かと思うが、関心はどう見せてどう語るかにあって、内容はなんでもいいや、くらいの感じで演劇を観ていたりするのです。にしても、中途半端な地方都市の権力者と労働者の補完し合ってしまう閉塞状況、差別と被差別、歪んだ性愛という、日本の経済構造を背景にした今風のテーマではあるのだけれど、私にはどうも古いような、手垢がついたような、そんな印象が拭えなかった。ただ一点、近親相姦やカニバリズム、フリークスへの偏愛という性をモチーフにしながら、なぜ権力者である<鬼島>の性愛は描かれなかったのか、女性飼育員だけは殴れなかったシーンに<鬼島>の去勢された性が表れていたように読め、一方では動物に還った被差別者二人が殺すべき相手を徹底的に殺る、そこは興味深かった。ともあれ、回転式舞台を内容と一体化させてみせた話法が突出した魅力で、スペクタクルとしても楽しめ、静かな演劇ばかりを観ていたのでかなり新鮮だった。

■ こんな勢いで演劇ばかり観ているのですが、11月16日にはTape & テニスコーツ@SDLX、11月19日は豪雨の中、上野とどっちにしようか悩んで池袋オルグに行き、柴田聡子や惑星のかぞえかたといったライブにも足を運んでみた。Tape & テニスコーツは本当に素晴らしかった。ツイッターでも書いたけど、もう音楽を屁理屈で語ったりするのはやめようと見ながら思った、それくらい完璧な音楽に触れた気がした。そして柴田ちゃん。「今日は気合いが入っていたんです」という演奏後の言葉を聞くまでもなく、この日最高の演奏だった。何より新曲がどれもとてもよく、いままさに化けようとしている瞬間に立ち会っていると感じておっちゃん涙ぐんでしまった。ミュージシャンの成長を現場で目撃できる幸せ。彼女のライブは行ける限り行きたいと思っています。

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■ で、11月23日は昼に吉祥寺で青年団『ソウル市民』を観て、夜は横浜・黄金町での田中淳一郎フェスティバルに赴いたのだった。あと先週は官能教育/藤田貴大×中勘助『犬』@新世界、在日ファンク@東京キネマ倶楽部、伊東篤弘氏やサンガツが出演したライブパフォーマンス「CE QUI ARRIVE-これから起きるかもしれないこと」@花やしきも観ました。感想はいずれまた。

■ 異常だ、ほんとにどこに向かってるんだ、おれ。




なー、ゴマ。「 どこに向かっているのでしょうか 」_d0075945_0521338.jpg
by gomaist | 2011-11-29 02:21 | 演劇


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