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「 痛いまま 」


■ 引き続き持病の痔病に苦み走った天知茂顔になってるわけですが、外はどうやらいい天気だ。ちょーキュートな春が町を歩いているんじゃないか。そんな春をロックオンして執拗にストーキングしたい気分。こんな日にあられもない姿を他人に晒して肛門を凝視されるばかりか、指や器具を挿入されるのはご免こうむりたい。しかし痛みで何をする気も起きないので、こんなどうでもいいこと書いて気を紛らわしてます。

■ 『果てなき路』を渋谷イメージフォーラムに観に行ったときに、独立系映画館によくあるように新聞や雑誌で取り上げられた作品評のスクラップが掲示されていた。終映後にそれを見ていたら、みなさんやはり『果てなき路』に酔わされていい意味で彷徨ってる感のある「評」までならない率直な言葉を綴っていたのだけれど(群像に掲載された蓮實先生はさすが蓮實先生だったがそれでもわざと焦点をぼかしているみたいな印象で、それでいてやけにストレートなこともおっしゃるのだなと思った)、その中でひとつだけ迷いの見えない堂々と言い切っている「評」があった。それは産經新聞の、イニシャル記名だったのでおそらく記者による、記憶では文字数にして300くらいだったろうか、映画紹介欄のようなコラムで、ざっと作品のアウトラインを紹介し最後に「深みはない。」と締められていた。

■ 評だろうが感想だろうが、何を感じようと何を言おうともちろん自由だし、300字程度の文章で書ける「作品紹介」なんてたかが知れているというか、読むほうも多くの情報を望んでいるわけではないと思うけど(私は望んでいない)、そこにこれを捩じ込むかと思って、つい二度読み返してしまった。とはいえ、そこまでの文脈は覚えていないのだけれど、作品の魅力に触れつつ、いきなりバサリと「深みはない。」で終わっていたと思う。まちがいなく、だから駄目、という意味合いで書かれていた。

■ ある表現(発言や作品)に対して「深い」とか「浅い」というのはつい言いがちなことで、たぶん私も何気なく使うことがあるとは思うけれど、そうした形容はたいていの場合、「深い」「浅い」と言った発言者本人の底の浅さを示しているだけで対象についての言葉にはなっていないと思う。「深みはない。」も「深みがある。」も、尺度が不明なそれだけでは何も言っていないに等しい。ああ、これを言った人はそう感じたのだな、この人の度量というか感受性というか価値観というか、受け止める能力は良くも悪くもその程度の底なのだなと、そう感じられるだけだ。「なんかおもしろいことない?」とか言ってる人がいるが、おもしろくない要因は外部ではなくて本人にあるというのと同じで。

■ 私は怒ってるわけでもdisってるわけでもなく、そういうものだよな、という、あの日に産經のそのコラムを読んで感じたことを、痔の痛みを散らす手管として暇にまかせて記録に止めているだけなのだけれど、さらに続ければ「深みはない。」と言った時に、その形容によって評価のようなものを下した意識の背景には当然「深いものは良い」「深くないものは良くない」という基準がある。80年代に称揚された軽薄短小を懐古的に、もしくはいまだにそこにしがみついて良しとするものではまったくないし、深かろうが浅かろうが本質には関係ないんじゃないかと思っているので、相変わらず「深いものは良い」とする価値基準に見える教養主義的な姿勢には過剰に反応してしまうところが自分にはあるのかもしれない。裏を返せばつまり私もまた教養主義にコンプレックスがあるからそういう反応をしてしまうのだろう。

■ 「深いものは良い」という教養主義に通じる価値基準の持ち主は総じて知識についても同じような価値を持っていて、つまり「深い」という尺度の大きさに価値を置くように、知識の量が「多い」のを良しとする傾向があるように思う。そうした人は知識欲が高く能動的に情報に触れ吸収しているかのように、自分でも傍からもポジティブに見えているかもしれないが、それがポジティブだとは私には思えないのだった。教養主義という先行する器に、とにかく「多く」「深く」知識をいれていかなければならないという課題に追われているように感じられて、むしろ受動的であり、一種のイデオロギーに支配されている状態に陥ってるのではないかと感じられてしまう。何よりそういう人はちっとも楽しそうに見えない。学問の世界は知らないが、趣味で映画や音楽を追いかけている人にはこういう人がけっこういる。

■ そうは言ってもさっきも書いたように自分にも教養主義に蝕まれているところはあるし、「イデオロギーに支配されている状態」なんて気取ったこと言って、何十年も知識の吸収をおざなりにしてきた成れの果てがこのようなおっさんであるという実例を身を持って示しているわけだから、若者は教養主義だろうがイデオロギーによる蹂躙だろうが情報コントロールだろうがステマだろうがそんなものは恐れずに、とにかくたくさんのものに触れまくって吸収しまくったらいい。そんでもって頭がぱんぱんになって身動きが取れないくらいぱんぱんになって、教養主義の器が一杯になってぶっ壊れてどこまでも真っ白くなっていける未来があることを羨ましく思う。そういう可能性を持った若さに嫉妬する。

■ 以上、新聞記者が書いた映画評やテレビ番組評はひどいという話でした。

■ そんなことはどうでもいい、結局尻は痛いままだ。そらそうか。




なー、ゴマ。「 痛いまま 」_d0075945_15464470.jpg
by gomaist | 2012-03-15 15:58 | 日日


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