人気ブログランキング | 話題のタグを見る

併発/痛みの記憶/ヤカン


インフルエンザに罹ったが体温は微熱程度まで下がったと書いたのは月曜のことで、今日は木曜になるのだけれどまだ布団の中にいる。月、火と2日間平熱でやり過ごしたが、風邪っぽい症状は治まらないまま水曜になって頭痛が急激に悪化し再び38度超の熱が出た。今日病院に行ったところ風邪を併発したのではないかとの診断で薬を3種出された。半日寝て解熱、ようやく諸々の症状も緩和して体が楽になってきた。

二度目の発熱で起きた頭痛はかつて体験したことのないほど激しいもので、持続的に締め付けられるような重い痛みと1分おきくらいにある内側から突かれるような鋭い痛みに耐えられず呻き声を上げた。流感のそれではなく外科的におそろしいことが起きているのではないかと不安になったほどだったが、治まってみたらほんの数時間前のその痛みをもう忘れている。忘れたというか実感として再現することができないのはもしかしたら自らの身に起きた痛みの記憶に特有のことなのかもしれない。痛みの記憶があまりに強く残り続けたらきっと人はひとつの痛みで命を急激に消耗してしまうことになるだろう。





いま寝ている隣の部屋ではテレビがついていて夜9時からのドラマの音声が聞こえている。電子音響的なノイズが背景に流れていてずいぶんアヴァンなBGM使いだと気になって耳をすましていたら、ストーブに乗せられたヤカンの蒸気が絶妙な音量で鳴っている音だった。いまはそっちの音だけに耳を向けている。ヤカンの内側の沸騰しきらない水面とヤカンとの接触面で水が蒸気に変わろうとする音だろうか。注ぎ口や蓋を押し上げる激しい蒸気のそれではなく抑圧的で微視的な、可聴域の臨界で音に転げてしまった音。全身を締め上げられて漏れた空気の呻きのようだ。





もうおわかりのように、映画とは、時間と空間がどんどん飛んでいく表現形式なのです。100分ほどの映画なら、ばらつきはありますが、だいたい90シーンくらいあると考えていいでしょう。つまり、1シーンに約1分ちょっと。大ざっぱではありますが、通常の劇映画とは1分半くらいの持続と90の断絶から成立している。おそらくこの形式は演劇とも小説ともかなり違うのではないでしょうか。

1分くらいというのは、リュミエールが最初に撮った映画がだいたいこれくらいの長さですよね。映画は、いまだに誕生の歴史を引きずっているのでしょう。

《黒沢清『黒沢清、21世紀の映画を語る』より》





なー、ゴマ。併発/痛みの記憶/ヤカン_d0075945_2274081.jpg

by gomaist | 2013-01-24 22:12 | 日日


ゴマと日日と音楽と。


by gomaist

フォロー中のブログ

ゴマブロ

以前の記事

2013年 11月
2013年 10月
2013年 07月
2013年 02月
2013年 01月
more...

検索

ブログパーツ

OSインストール方法

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31